台湾の政府系デザインシンクタンクである台湾デザイン研究院(TDRI)が主催する、アジア最大級のデザインの祭典「台湾デザインウィーク2025」が、2025年11月29日から12月7日までの9日間、台湾・松山文創園区を舞台に開催された。

今回のテーマは「DESIGN NEXT」。台湾内外の31チーム・27のデザイン事例が展示されるとともに、国際デザイン学会連合「IASDR(International Association of Societies of Design Research)」(※)との連携により、国際シンポジウムも実施された。
※IASDR:デザイン活動全般に関する研究・学術的探究を促進し、独立したデザイン研究団体間の国際協力を強化することを目的に、2005年11月1日に設立された。世界のデザイン研究コミュニティをつなぎ、デザイン知識の共創と発展を促すプラットフォームとして機能している。

この記事では、台湾デザインウィークの体験設計と事例から、沖縄のデザイン実践にとってのヒントを整理する。
「台湾デザインウィーク2025」 概要と特徴
「台湾デザインウィーク2025」は、「デザインの可能性を問い、その価値を体感するための場」として構成。国内外の多様なデザインチームによる作品は、「来場者自身が「問い」を立て、体験を通じて思考する」ことを促す展示が多数を占めた。単なる鑑賞にとどまらない参加型・体験型の展示が印象的である。
ハイライトを紹介する。
- バーチャル音楽フェスティバル「夕陽小鎮」――来場者参加型の体験プログラム
- 民主主義の価値をセルフィー体験で問う「民主相機計畫」
- 循環型経済をテーマにしたフラワーアートとプラットフォーム連携展示「沉積場:Fragments of Now」
- 都市開発の持続可能性を考えるモジュール住宅プロジェクト「台灣厝 One House for All」




展示のキュレーションには、台湾鉄道観光列車デザインで知られる設計チーム「築點設計 archicake design」がかかわり、「どのような暮らしを送りたいか?」「どんな世界を信じるか?」といった根源的な問いを来場者自身に投げかける構成に。
展示の最後では、7名の専門家から未来のトレンドとそのコアバリューが共有され、来場者はインタラクティブゲーム「価値選択のスペクトラム」に挑戦することで、民主主義を楽しみながら実践する。

「台湾の街並みは、さまざまな看板や標識、トタン屋根に違法建築など、多様性にあふれています。あなたは『この多様性を維持する』『視覚的に統合する』、どちらを望みますか?」など価値観を問う8つの質問が用意されており、来場者は投票スタンプを用いて回答していく仕掛けとなっていた。

国際デザイン学会連合「IASDR」との連携 ──
デザイナーが未来の課題にどのように寄与できるか
「台湾デザインウィーク2025」では、デザイン国際学会連合「IASDR」との連携による国際シンポジウムが開催され、47カ国から800名以上のデザイン専門家が参加。学界・産業界・研究機関の多様な視点が交錯した。

基調講演では、
テクノロジーと人文科学の関係、教育や都市、民主主義におけるデザインの役割、
さらに、スマートテクノロジー時代におけるデザインと美学のあり方など、
幅広いテーマが提示された。
これらの議論を通じて、デザインが単なる表現や手法にとどまらず、社会や文化、価値観の形成にかかわる存在であることが共有された。
台湾デザインウィークが示す3つの知見
以下では、同イベントから得られるヒントを整理する。
【知見1】 「問い」が生まれる体験・場を、デザインする
台湾デザインウィークの展示は、単なる成果物の並置ではなく、来場者が空間を歩き、言葉に触れ、選択し、立ち止まるという一連の体験を通して、自ら「問い」を立てる構造として設計されていた。
そこでは、答えやメッセージを一方的に提示するのではなく、「問いが自然に立ち上がる体験の場」そのものがデザインされている。
これは、地域デザインの実践にも大きな示唆を与える。
地域の課題を「解決すべき問題」として外部から与えるのではなく、住民や関係者自身が、
「この地域でどのように生きたいのか」「何を大切にしていきたいのか」
といった根源的な問いに向き合う体験の場をつくること。
その場の設計こそが、地域デザインの本質であり、スタートとなる。
【知見2】 世界の知と、現場の実践を行き来するデザイン
国際デザイン学会連合「IASDR」との連携は、単なる国際交流の枠を越え、デザインが理論と現場を行き来しながら、発展・進化する可能性を示した。
環境・社会・技術が複雑に絡み合う現代においては、 単一の分野の知だけでは十分に対応することが難しい。
学際的な視点を取り入れつつ、現場で検証し、再び理論へと還元していく。 その循環こそが、新たなデザインのあり方をかたちづくっている。
このモデルは、沖縄の地域課題に向き合う上でも、 デザインの新たな役割を考えるうえで重要な示唆を与える。
【知見3】 世界基準と地域らしさを、同時に活かすデザイン
台湾デザインウィークには、国際的な視点とともに、地域固有の文化が同時に提示されていた。
多様な文化表現が交わる空間は、デザインが世界に通じる価値と、その土地ならではの物語を同時に伝えうることを示している。
どちらか一方を選ぶのではなく、 「両者を併せ持つ」ことをデザインの中核に据えることで、 地域の“らしさ”は社会の中で活かされていく。
その視点こそが、地域の価値を広げていく鍵になる。
地域とデザインのこれから
一方、沖縄に限らず、地方や島しょ地域の産業や文化の現場では、人口減少、担い手不足、観光への依存、地域経済の縮小など、複数の課題が同時に進行している。
こうした状況に対し、従来のやり方だけでは対応しきれない場面が増えているのが実情である。
その中で重要となるのは、住民、事業者、行政、研究者など、立場の異なる人たちが対話を重ねながら、対話を通じて方向性を共有し、実践し形にしていくという共創の姿勢である。
デザインの考え方は、そのプロセスを支えるための1つの手段となり得る。
DIOは、台湾で得た知見を参考にしながら、多様な共創パートナーとともに、地域の文脈に合ったかたちで、小さな実践を積み重ねていく。
その積み重ねを通じて、地域の未来を“誰かが決めるもの”ではなく、みんなでつくっていくものとして描いていきたい。

記事引用元:【開催レポート】アジア最大級の国際デザイン祭「台湾デザインウィーク」、2025年度はデザインの国際学会連合IASDRと連携