2026年10月24日、琉球大学の琉ラボ(STARTUP LAB RYUDAI)で、デザインイノベーションおきなわ(DIO)が講師を務める学生向けセミナー&ワークショップ「AI時代に活きる思考法を体験しよう」を開催しました。おきなわスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム、琉ラボとの共催です。大学生を中心に高校生・社会人ら11名が参加し、関心のあるテーマから「問い」を立てて、対話を通じてその「問い」を深めていくワークに取り組みました。

今回のテーマは、「AI時代を迎え、ますます『問い』が大切になる」。AIチャットを使えば、さまざまな答えをすぐに得られる時代です。だからこそ、本質的な課題はどこにあるのか、その課題の解決のために必要な情報は何か、どんな状況を解決したいのかを考えるために、どんな「問い」を立てるかが大切になります。

身近な関心事から、自分なりの「問い」をつくる
ワークは、参加者が環境、教育、地域、大学など、身近なテーマを選ぶところから始まりました。まずは、その選んだテーマについて気になることを書き出し、自分なりの「問い」にしていきます。
この段階では、解決策までは考えず、「なぜ気になるのか」「課題として取り上げた理由」をもとに言葉にすることを大切にしました。
仲間との対話を通じて、「問い」に別の視点を加える
続いて行われたペアワークでは、相手の関心事や経験などバックグラウンドを聞いたうえで、お互いの「問い」について話し合いました。相手の視点を受け取り、自分だけでは気づかなかった前提や可能性を探っていきます。
名前や所属の交換から趣味に至るまで、初対面同士でも相手の話をよく聞き、その背景を知ろうとする姿勢が見られました。どのテーブルでも会話が弾み、和やかな雰囲気ができたところで、相手が考えた課題や「問い」に対して自分の経験や思いを伝えることで、相手の「問い」に多角的な視点を与え、「問い」を深めていきます。
相手のことや、対話で深めた「問い」を全員で共有
続いては、ヒアリングをした相手のことを、参加者全員にシェアします。自分が話したことがきちんと相手に伝わっているか、自分が考えていたこととの差異はあったか、それぞれの「聞く力」「まとめる力」「伝える力」が問われます。
発表では、「若い人の読書率の低下」や「沖縄の漁業の担い手不足」「食品ロスの問題」「地域のシャッター商店街の活性化」「学制組織の運営」など、学生たちの身近な関心から生まれた「問い」がシェアされました。

たとえば、「漁業の担い手の高齢化」について話し合ったペアは、漁業をより身近な仕事にする方法、しっかりと収入のある仕事として認識をさせることを考えました。船を自分で用意して独立する形だけでなく、会社が養殖の場を提供し、従業員として働ける仕組みがあれば、漁業に関心を持つ人が増えるのではないかという視点も出ました。
また、アルバイト先で「食品の廃棄」を目にした学生は、データサイエンスを生かしたフードロス削減を考えました。さらに、廃棄されるお米をインクに活用する事例も共有され、「問い」の視点が広がりました。
AIの答えを比べ、「問い」の違いを確かめる
ワークの最後は、最初の「問い」と、仲間との対話で深められた「問い」がどう変わったかを振り返り、それぞれの「問い」を生成AIのチャットに入力して、出力されたAIの回答を比べました。「問い」の背景や対象、場面など、より具体的な指示を加えると、AIの返答も変わります。
「ガーベージ・イン、ガーベージ・アウト」という言葉が示すように、問いが曖昧なままでは、AIの答えも一般論にとどまり、実際の状況に合わないことがあります。AIの答えをそのまま活用するのではなく、仲間の経験や対話で得た視点も加え、「問い」を整えていくことの大切さを確認しました。
台湾での体験から「問い」を深め、解決策を具体化した事例を学ぶ
ワークの後は、琉球大学の学生、外間久紗乃(ほかま・ひさの)さんが、台湾で約1カ月過ごした経験を発表しました。テーマは、「デザインで貧困などの社会課題にどう向き合うか」です。現地での経験を通じて「問い」を深め、解決策を具体化していった事例を参加者に共有しました。

また、外間さんは、台湾のNPOや地域の活動団体を訪ねる中で、団体同士が連携して支援につなげること、人とのつながりが個人の可能性を広げること、地域の文化や日常に価値を見出すことを学びとして挙げました。
発表の最後には、沖縄への提案として、福祉分野での団体間の連携や、社会課題を身近に考えるきっかけとなる啓発活動、地域産業の価値をデザインの力で伝える工夫を紹介しました。
「問い」を深めることが、自分の考えと次の行動につながる
参加者の発表は、「問い」の背景や相手との対話で加わった視点まで伝える、具体的な内容となりました。相手の話をじっくり聞くことで、自分の中にも新しい見方が生まれることを、参加者自身が発表を通じて示してくれました。
今回のワークで体験したのは、自分で「問い」を立て、他者との対話から視点を広げ、AIも活用しながら考えを深めるプロセスです。
セミナー開催の翌日、10月25日付けの日本経済新聞に「AI時代に『なぜ』を問う ビジネスとの距離は確実に近づく」と題した記事が掲載されました。私たちのセミナーではAI時代には「現場でのリアルな体験が鍵になる」と伝えました。記事では、AI時代に人が「問い」を立て、現場に出て考えることの重要性が紹介されています。
今回のワークで体験したのも、身近なことから「問い」をつくり、人との対話や現場での経験を通じて考えを深めていくことです。生成AIが答えを出してくれる時代だからこそ、何を問うのかを考え、自分の考えを育てる経験が大切になります。今回のセミナーが、参加者一人ひとりにとって、学びや日常の中で「問い」を深めるきっかけになればと思います。

DIOでは、「問い」を起点に人や地域の課題を考える人材育成にも取り組んでいます。企業や地域での研修・ワークショップについても、お気軽にご相談ください。









